そういえば、旅行中はAM5:00台には起床し、リビングルームでメールチェックとそれに付随する仕事をする毎日を送っていました。

日本との時差的にイタリアの朝方はちょうど日本のデイタイムにあたることもあり、そこで仕事をひと段落させておけば、日中こちらが外に出ている時に追いかけられるようなこともなく。このスタイルであれば旅しながら仕事することも不可能ではないなあ……などとぼんやり考えてみたり。国によって時差が異なるのでそう上手くは行かなさそうだけれども。

と、いうわけで、毎日とても早起きをしていた旅行中だったのですが、3日目の朝はメールチェックを終えたのち、まだ日が昇らない街中へ散歩に出かけました。

お天気が良いと、空が朝焼けに染まる美しい景色が見れるようなのですが、この日もあいにくの曇り空……。

まずは宿から歩いて10分ほどのヴェネチアの玄関口、サンタ・ルチア駅へ。ヴェネチアには鉄道が通っていないので、これが唯一の鉄道駅とも言える。イタリア本土との連絡地としての役割を担っているそう。

駅舎にあしらわれていた“FS”のエンブレムが、何故か共産主義圏にありそうなデザイン。個人的に好みでやたら写真を撮ってしまったのだけれど、このエンブレムは何を意味しているものなのか、調べても分からなかった。

海外の駅ってワクワクしますよね。小腹を満たすべく、駅にあったカフェでパンとカフェラテを買って駅をあとにしました。

空に描かれた点線のようなものは、鳥。ちなみに、イタリア人でカフェラテ飲んでいる人は皆無(なのであんまり美味しくない。牛乳のせい?)。エスプレッソがデフォルトです。

鮮やかな朝焼けを見ることはできませんでしたが、ほんのりと太陽の光に染まっていく建物も美しかった。

ヴェネチアの鳩はやたらと黒い。

お世話になった宿(というかAirbnb)の前の通路。とてつもなく細い。

Palazzo Grazzi(パラッツォ・グラッシ)へ

朝散歩を終えて、宿で一息ついたのち、この日は今回の旅の一番の目的、ダミアン・ハーストの新作展覧会「Treasures from the Wreck of the Unbelievable.」へ。

http://www.palazzograssi.it/en/exhibitions/current/damien-hirst-at-palazzo-grassi-and-punta-della-dogana-in-2017-1/

ダミアン・ハーストにとって、2004年にナポリで行われた回顧展以来初の個展となった本展覧会。グッチなどを所有する巨大コングロマリット、ケリングの初代CEOでありながら、アートコレクターとしても知られるフランソワ・ピノーの財団が所有する2つの美術館、パラッツォ・グラッシ(Palazzo Glassi)とプンタ・デッラ・ドガーナ(Punta della Dogana)での開催です(〜2017年12月3日まで)。

これら2つの会場を使って1人のアーティストの展覧会が開かれるのはこれが初めてで、その広さは5000㎡を超える規模(!)。ちなみに、両館ともに安藤忠雄氏がリノベーションを手がけています。

まずは、パラッツォ・グラッシへ。

【余談】チケットはウェブで買っておくのがラク

混雑を見越して、ヴェネチアに着いてすぐ、ウェブサイトからチケットを購入しておきました。1時間ごとに時間帯が区切られていますが、完売になっている時間帯は見当たらなかったので、焦る必要はないでしょう。行ってみてよくわかりましたが、会場が巨大なのでそもそもチケットをソールドアウトさせる必要がなさそう、という(笑)。

1番早い時間、10時のチケットを購入していたので、9:40くらいには現地で待機していたのですが、開館近づくにつれ続々と人が集まってきます。チケットを事前に買っておいて良かった。

ちなみに、ウェブで買えるEチケットはPDFで送られてくる(またはウェブサイトからログインして確認する)方式。「印刷して持ってきてね」と書いてありましたが、QRコードをiPhoneに表示してエントランスで見せれば問題なしでした。

巨像が我々を出迎える

2008年に東アフリカ沖の海底で発見された、約2000年前に沈没した難破船「アピストス(当時のギリシャ語で「Unbelievable」の意味らしい)に積まれていた、スカルプチャーや装身具、ジュエリーやコインなどの財宝。2000年の時を経てサンゴや海洋生物に覆われたそれらの財宝はそのままに、元の姿を想像して作られたコピーを共に構成した。

という、“ストーリー”の元に展開される本展覧会。(ここでは意訳してしまいましたが、仔細なストーリーなので、気になる方はこちらからPDFで目録を見てみてください。)

会場に入って、まず度肝を抜かれたのが、会場の中心に設けられた吹抜けにそびえ立つ虚像……ではなく巨像。事前のリサーチ段階から写真で見ていたのですが、実際の迫力たるや……視界に全てが入りません……。

この「Demon with Bowl」という作品、“難破船から引き揚げたブロンズ像を複製して、拡大した”ということらしい。巨像を横目に、会場内へ。

海底で行われた発掘作業の模様をまとめたムービーを見たのちに(当初は、飛ばしてしまったのであとで見た)、

その先に広がる展示スペースでは、難破船から発見されたという“設定”の、途方も無い数の作品が会場を埋め尽くしていました。

中にはディズニーキャラクターなど、我々に見覚えのあるものもちらほら。「ん?2000年前にこんなものは存在しないよな……」と、頭の中にはてなマークがちらほらと浮かんできます。

難破船在りし日の姿を再現した模型も。

Palazzo Glassiは3層構造になっているのですが、階を重ねるたびに、吹抜けに置かれた巨大スカルプチャーの見え方が変わっていくのが面白い。3階まで自分の脚登らないと全てを見ることができない、人間のちっぽけさを突きつけられるようでもありました。

最上階まで登って、見てみてわかったこと。頭、なかった。

Palazzo Glassi

窓からはカナル・グランデが望めます。

時がたつに連れて来場者は増えてきましたが、会場がとてつもなく広いので混雑していて見にくい、ということはよっぽどのことがない限りはなさそうでした。

パラッツォ・グラッシ近くのサント・ステファノ広場でランチ

パラッツォ・グラッシを見るだけであっという間に数時間。パワフルな作品たちに力を吸い取られ、へとへと……お腹もすいたぞ、ということで、

Tripadovisorで見つけた、サント・ステファノ広場(Campo Santo Stefano)に面したイタリアンへ。

みんなハードそうなパスタやピザをオーダーしていたのですが、パスタに飽き始めた私は何か胃に優しそうなものが食べたくて、ブイヤベース的な海鮮スープをセレクトしてみました。喉が痛いし声は出ないし風邪も完治しないしで、なかなか辛かったのですが、優しいお味が身体じんわり染み渡りました。

貝類、食べれないんだけどね。

Le Cafe

S. Marco, 2797, 30124 Venezia VE, Italy
Tel: +39 041 523 7201
営業時間: 8:00-22:30

サント・ステファノ広場には他にも沢山レストランがあったので、パラッツオ・グラッシに行った後にお腹が空いたら、ここに行けば何かしらお腹に入れることができると思います。

ヴェネチアに来て、初めての晴れ間。

ヴェネチアに来て、初めての晴れ間。

腹ごしらえが済んだところで、徒歩でもう1つの会場、プンタ・デッラ・ドガーナへ向かう。パラッツォ・グラッシからプンタ・デッラ・ドガーナは徒歩で15分ほど。

カナル・グランデに掛かる、ヴェネチアらしくない(?)外観アカデミア橋(Ponte dell’Accademia)を渡って、対岸へ。

突如現れた金色の柱。

ヴェネチア・ビエンナーレの会期中ということもあって、こういったパブリックアートがそこかしこに設置されていました。

シンボリックなサンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂が見えてきたら、まもなくプンタ・デッラ・ドガーナに到着です。

もう一つの会場、プンタ・デッラ・ドガーナ(Punta della Dogana)

プンタ・デラ・ドガーナは15世紀に税関として使われていた建物を、2009年に安藤忠雄氏がリノベーションし再生した美術館。

元々の建物の名残なのか、木と煉瓦、そして安藤忠雄氏を象徴する打ちっ放しのコンクリートのコントラストが美しい館内。

こちらの会場は天井の高い空間が多く、それに呼応するような巨大な像がこれでもか!これでもか!と展示されていました。

巨大な作品の規模と反比例するような、フジツボやサンゴの細かなディテールの作り込みに、徐々に狂気を感じてきます。途方も無い仕事量が想像できる……。

人がミニチュアのようにみえますね

最後に、細〜い階段を抜けていくと、隠し部屋のようなスペースにたどり着き、すべての作品を見終えました。

全200点を超えるという作品たち。この展覧会を終えたら、どこへ行くのでしょうか……。途方も無いお金と年月をかけて作られた“虚構”に、只々、感嘆させられたのでした。日本じゃ絶対に再現できない規模感、ここまで観に来て良かった。

Punta della Dogana(プンタ・デッラ・ドガーナ)

ひと休憩挟んで、プンタ・デッラ・ドガーナのご近所にあるアカデミア美術館(Gallerie dell’Accademia)へ立ち寄ってみたり。ここは14世紀から18世紀までのヴェネチア派絵画を中心にコレクションしている美術館。

気づくと、天井のレリーフばかり写真に撮っていた。

わざと遠回りをして、のんびり散歩しながら宿の方角へと歩みを進めていくと、すっかり日も沈み、早朝に訪れたサンタ・ルチア駅に戻ってきていました。

対岸から見る駅舎も良い。

何度見ても飽きない夜の運河。

Trattoria Bar PONTINIでディナー

「評判が良いので、みんなで行こうと予約を取ろうと思ったら満席で取れなかった。」という話をK氏から早朝に聞かされていた「Trattoria Bar PONTINI」。

「少人数だし(大人2名+キッズ1名)だし、オープンと同時に行けば、入れるんじゃない?」と一か八か突撃してみたところ、すんなり入れてもらえました。(開店は18:30だったはずなのだけれど、時刻はまだ18:00にもなっていなかった上に、すでに食事をしているグループがいたのが謎でした。笑)

キノコのサラダ、そしてお店の方おススメのイカとエビのフリッター、シーフードたっぷりのパスタ。案の定食べきれなかったけれど、美味しかった。塩分控えめで、食材から出る旨味を生かした日本人の舌に合うお味でした。

続々とお客さんがやってきて、あっという間に満席に。

Trattoria Bar PONTINI

Fondamenta Cannaregio, 1268, 30121 Venezia VE, Italy
Tel: +39 041 714123
営業時間:11:30~17:00,18:30~22:30 (日曜定休)

映画館をリノベして作られたスーパー

帰りはいつものスーパーに立ち寄って帰宅。

このスーパー、「Despar」というチェーン店なのですが、壁面に刻まれた「TEATRO ITALIA」の表記の通り、元々映画館だった建物をリノベーションして作られたスーパーらしい。調べてみたら今年オープンしたばかりとのこと。

扱っているものは上質なものばかり、価格はちょっとお高め。日本でいうと、成城石井のような感じ。ヴェネチアでご近所に行かれることがあれば是非立ち寄ってみてください。

Despar Teatro Italia

Campiello De L’Anconeta 1944, 30121 Venezia VE, Italy
営業時間: 8:00-21:30

長くなりましたが、アートをめいっぱい楽しんだ1日でした。iPhoneのHealth Appをチェックして見ると、歩いた距離はこの日だけで10km以上! 東京じゃこんなに歩く気にはならないな……。

ヴェネチア旅行記、まだまだ続くよ!

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